リモートワークやワークスペースってどう確保する?経費や運用の注意点もご紹介
リモートワークはワークスペースの確保と環境づくりが肝要
社会情勢の変化や働き方改革によって、リモートワークで働く人も増加してきています。
リモートワークが一般的になれば企業にも従業員がワークスペースを作るためのサポートが求められます。
リモートワークのサポートは勤務環境だけに限らず、多くに影響を与えるため、社内制度や労務管理の見直しも含めてリモートワークに対応することになるかもしれません。
企業にとって、従業員にとって、より効率や生産性が高いリモートワーク体制をお互いの協力で構築しましょう。
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この記事の目次
みんなどうしてる?リモートワークのためのワークスペース
社会の変化に伴ってリモートワークが増えてきました。リモートワークの問題点として、まずワークスペースが挙げられます。リモートワークのワークスペースに関して抱えているお悩みを紹介します。
まずお悩みとして聞かれたのが、ワークスペースとして使える場所がないといった意見。
個室や書斎があれば問題ありませんが、そうでないとまずどこで仕事をするかが問題になります。リビングの一角をワークスペースとして利用することもできますが、集中しにくく、パソコンや周辺機器が邪魔になってしまうこともあります。
また、ワークスペースは音の問題もあります。外の音がうるさい場合には集中しにくいだけでなく、オンライン会議に支障が出ることもあります。子供や家族がいるとさらに問題は複雑になると考えられます。家族構成や住宅環境に合わせて自分のニーズに対応したワークスペースを見つけなければいけません。
ワークスペースを考えるポイント
新型コロナウイルスの影響で、今までは在宅で働くことがなかったのに急遽ワークスペースを用意するケースも珍しくありません。ワークスペースを考えるにはどのようなポイントに着眼すると良いのでしょうか。
業務内容と必要な設備を整理する
初めに考えていただきたいのが、自宅でどのような業務を行うことになるかです。デスクワークや書類作成だけであれば、場所の制約も少なく、最低限のスペースで働くことができます。
オンライン会議をするのであれば、周囲の音やビデオに映る部屋も気にしなければいけません。一人で集中して仕事を進めることが多いのか、頻繁に連絡したりオンラインミーティングをしたりすることが多いのか、ワークスぺースの使い方をイメージしてスペースを確保しましょう。
家族との距離感でワークスペースの場所や環境を決める
自宅で働く場合、一緒に住んでいる家族との距離感が問題です。子供がある程度大きかったり、自室を持っていたりする場合、夫婦だけで暮らしている場合は、問題になることが少ないと考えられます。しかし、子供が小さかったり、そもそも自室のスペースがなかったりする場合には、どのようにして仕事に集中できる空間を作るかも考えなくてはいけません。
リモートワークしなくなってからも活用できるフレキシブルさ
新型コロナウイルスで出社が難しくてリモートワークになった人も多いはずです。リモートワークを用意する場合、これから先もリモートワークが多いのか、それとも一時的な措置としてリモートワークになっているのかを考えてください。
ずっとリモートワークになってワークスペースも使う予定であれば、リフォームも視野に入れてワークスペースを用意する選択肢もあります。しかし、いつまでリモートワークかわからない場合は、リモートワークが終わって必要なくなったワークスペースをどうするかまで考えます。
すぐに元の状態に戻すのか、他の用途を作るかイメージしてください。使い終わったワークスペースは家事をするための家事室や子供部屋として活用可能です。子供の成長や生活の変化も念頭に置いて考えてください。
リフォーム無しでも大丈夫!自宅にワークスペースを作る方法
ワークスペースと聞くとリフォームが必要と考える人もいるかもしれません。しかし、自室にワークスペースを作るのはちょっとした工夫で可能です。どうやってワークスペースを用意すればいいのか紹介します。
リビングの一角をワークスペースにする
リビングに余裕があれば、一角をワークスペースとして活用することを検討してください。コンパクトな机を置くか、簡単なパーティションで区切るだけでワークスペースにすることができます。
デッドスペースをワークスペースに
個室がなく、リビングに余裕がない人は、間取りのどこかにデッドスペースがないか探してみてください。例えば階段下の空間や玄関横のちょっとしたスペースもワークスペースとして活用可能。いつもは物置や家事スペースとして使っている空間もワークスペースとして利用できます。
空間を区切れば簡単に仕事の空間が作れる
ワークスペースを作るときに意識して欲しいのが空間の区切れです。同じ空間であっても家具で区切るだけで境目となりワークスペースに使いやすくすることが可能。パーティションやラックで区切れば、オンライン会議でもプライバシーを守ることができます。
さらにカーペットや段差で空間を分けると、より独立した部屋らしさを出すことも可能です。
リモートワークに必要なもの
普段意識することはあまりありませんが、私たちはさまざまなツールに頼って働いています。リモートワークをするためには、それらのツールも別に用意しなければいけません。
これからリモートワークをするときにどのようなものを用意すればいいのかまとめました。
パソコン
リモートワークでまず必要なのはパソコンです。職場ではデスクトップパソコンの場合、リモートワークではノートパソコンを支給されるか私用のパソコンを使います。
パソコンは書類作成からメール、会議までさまざまな用途に使われます。普段使っているパソコンでもそのまま仕事に使えると考えるのは甘いかもしれません。スペックが低いパソコンや古いパソコンだと処理が遅く、業務に支障をきたす可能性があります。
また、すでにOSのサポートが終わっているパソコンだと、必要なソフトが入れられなかったり、セキュリティ面でもリスクがあったりと仕事には向いていないことがあります。可能であればリモートワークをきっかけに適したパソコンを用意するようにお勧めします。
セキュリティやソフト類
仕事ではさまざまなソフトウェアを使って作業をすすめています。WordやExcelといったオフィスソフトはその代表的なもの。また、リモートワークに際してチャットツールやオンライン会議用のソフトを導入することもあるはずです。
個人所有のパソコンの場合、ソフト類のインストールができないこともあります。企業は個々の状況を確認しながらそれぞれ対応しなければいけません。多少費用と時間がかかったとしても、長期にわたるリモートワークを効率的に行うため必要な投資と手間考えてください。どうしても環境が整わない場合は、会社からパソコンなどの機器を支給することも検討してください。
インターネット回線
リモートワークを始めるとき、特に重要なのがインターネット回線です。インターネット回線の速度が遅いとオンライン会議で通話できなくなったり、作業効率が落ちたりと多くの影響があります。
いまや、ほとんどの家庭でインターネット回線は敷かれています。しかし、リモートワークの場合はより早さと安定性を意識する必要があります。セキュリティの問題から考えると可能であればプライベートの回線と仕事用の回線は分けることをおすすめします。現在のインターネット回線に不安がある場合、リモートワークをきっかけに契約プランの見直しや他の回線への乗り換えも検討してください。
備品類
リモートワークを始めるにあたって必要なインフラが揃ったら周辺機器や備品をチェックしてください。例えば椅子が固くて体に負担がかかるものだったり、高さがあっていなかったりするとリモートワークを続けるうえで支障をきたします。クッションを置いたり、高品質のイヤホンを用意したりと働きやすい環境を作るための備品も用意してください。
事業者としてリモートワークを導入するときの注意点
リモートワークは従業員側だけの問題ではありません。雇用する側、事業者側も従業員がリモートワークになることを想定して、リモートワークに適した労働環境を整える必要があります。リモートワークの導入に際して、事業者側からどのような点に注意すべきなのかまとめました。
リモートワークにできる業務を分析する
リモートワークを導入するためのプロセスとして初めに実施してほしいのが、現状の業務分析です。この業務分析でポイントとなるのは①業務時間②使用する書類、資料類、③業務に必要なシステム④コミュニケーションです。
特にどのような書類を必要としているのか、紙なのか電子なのか、個人情報は社外秘の情報はあるかどうかは特に慎重に精査してください。また仕事の内容によってチームで対応する仕事なのか、やり取りはどの程度あるか、そしてオンライン会議で対応できるかも考えます。
上記の業務分析から、現状でどの仕事がリモートワークにできるか、業務のために必要なシステムはなにかを洗い出してください。リモートワークではどうしても実施困難な業務があるはずです。
リモートワークで不可能な仕事は、まとめて対処しつつ業務量を把握しながら働き方を考えます。業務については実際に働いてる人しかわからない内容もあるため、従業員とその上司、チームメンバーで話し合ってまとめてください。
リモートワークできない仕事としてよく挙げられるのが、ハンコを使った業務や対面の業務です。ハンコは電子署名やデジタルツールで対処可能。しかし、接客や現場指示のように場所に制約がある仕事はリモートワークの導入は困難です。
リモートワーク対象者を選定する
リモートワークにする業務が決定したら、次にリモートワークで働く対象者を決めます。リモートワーク対象者を決定するには、業務内容のほかに個々の環境も考慮します。例えば育児や介護を担う従業員はリモートワークを希望している場合があります。
できるだけ不公平感がないように従業員それぞれの希望の働き方を聞いてください。リモートワークの導入が段階的なものになるとしてもリモートワーク対象者は広げることが望ましいと考えられます。職階や立場で対象者を分けることも検討してください。
リモートワーク形態の検討をする
リモートワークと一言で言ってもその形態は千差万別です。完全に在宅勤務なのか、サテライトオフィスを設けるのか、出社日は設定するか、リモートワークの形態を考えなければいけません。
リモートワークと聞くとずっと在宅勤務だとイメージする人もいますが、週に数回のリモートワークで後は出勤しているケースが多くみられます。サテライト勤務の場合も他社共有のサテライトオフィスを利用するか、自社専用のサテライトオフィスを用意するかを考えなくてはいけません。
リモートワークになる人材の評価について定める
リモートワークを導入する場合、労務管理制度も見直しが求められます。リモートワークでは従業員の裁量で働くため、始業や終業、休憩時間の管理をどのように行うかを考えます。例えば勤務時間や休憩時間を上司に報告するほか、勤怠管理システムを導入する対処法があります。
リモートワークの従業員に対してサボっていないか、逆に勤務時間以上に働き過ぎてないか不安を感じる上司は少なくありません。逆に従業員側もどのように評価されるのかと不安に感じることがあります。お互いの不安を取り除くには勤怠管理や離席管理ができるソフトを導入することも検討してください。
またリモートワークしている従業員の人事評価も考えなくてはいけません。短期的なリモートワークであれば人事評価に与える影響も少なく、評価制度の変更は不要です。しかし、リモートワークが続ければどのように評価するのか基準をはっきりさせる必要があります。リモートワークをきっかけに、実績や業績ベースの評価制度に移行することも検討してください。
リモートワークに関係する社内ルールを整備する
リモートワークを導入するには社内制度についてリモートワークのルール策定が必要です。まず、どのようなルールでリモートワークを行うのかを考えてください。従業員個々のリモートワークのスケジュールや勤怠をどのように管理するのか、上長の承認が必要になるのかをルールとしてはっきりさせます。
リモートワークのルールや運用を現場の判断に任せっきりにしてしまうと、従業員ごとに対応が違って不公平になることがあります。初めにリモートワークのルールと運用方法を策定してください。
またリモートワークに関してはコスト負担についても決めておくようにおすすめします。
自宅でリモートワークをすると、そのために必要な通信費や光熱費、IT機器、備品の費用を従業員が拠出します、これらの費用負担については、従業員と話し合い費用負担のルールを決めておくことが望まれます。
タブレットやノートパソコンを社員に支給すれば、管理しやすく、また通信料を会社が負担するときも簡便です。また個人の通信機器を使う場合は、プライベート利用と仕事での利用を分けてから、必要分を会社に請求する場合もあります。
リモートワークする日数が多くなれば、その分光熱費も増額します。在宅勤務の日数が多い場合は会社からの補助を検討してください。リモートワークの導入によって通勤手当も変わります。今までは定期券の購入だった従業員も、在宅勤務のほうが多い場合、都度精算したほうが割安となる可能性があります。
リモートワークによる変化は働き方、ルールに大きく影響を与えます。新しくできたルールや変更になったルール、就業規則に変わりがあった場合は、早めに従業員に周知するように努めてください。
電子化やセキュリティにも対応する
普段の仕事から個人でできる作業だけの切り分ける切り分け型のリモートワークは、可能な業務に限界があります。リモートワークでできる仕事だけ切り分けるのでなく、普段の仕事をデジタル化して、オフィスでも自宅でも同じように仕事ができるような職場環境を目指してください。
リモートワークを推進するには文書の電子化が必要。また社内情報の持ち出しが必要になるので情報漏洩、不正アクセス、通信回線の安全性が求められます。情報セキュリティを確保するためには社内情報アクセスへの認証や、遠隔からパソコンを操作できるような管理ソフトの導入があります。さらにセキュリティが高いクラウドサービスを導入することで、セキュリティを確保可能です。
社外からリモートワークで必要な社内情報にアクセスするには、さまざまな方法があります。自宅のネット環境からリモートデスクトップツールで会社のパソコンを遠隔操作する方法。加えて業務に必要な情報をクラウド上において自宅のパソコンからクラウドアプリにアクセスする方法です。
サテライトオフィスで働くのであればサテライトオフィスで提供されるLANを活用してVPNで安全に社内システムに入る方法もあります。電子化やセキュリティの問題も解消すれば、今後も企業と従業員がともに働きやすい環境になると考えられます。
まとめ
急速な社会の変化により、なし崩しでリモートワークを導入する企業も少なくなくありません。リモートワークは上手に活用できれば企業にも労働者にとっても大きなメリットがあります。リモートワークを導入することで、マネージャーや専門知識がある社員が家庭の事情で出社しにくくなっても就業を継続できます。
さらにリモートワークができる環境にしておけば、災害で通勤できない時にも業務を遂行可能。従業員にとっては育児や介護、病気の治療と仕事を両立できることもメリットです。通勤時間が減ることで趣味の時間を増やし、身体的負担を減らすこともできます。
しかし、リモートワークも中途半端な導入の仕方をしてしまうと社内に混乱を起こすリスクがあります。リモートワークをするためには事業者と従業員双方が力を尽くして、仕事の環境やルールを整える必要があります。
創業手帳(冊子版)は、従業員管理や就業規則、働き方について多様な情報を掲載しています。起業時や会社の変革時期のサポートにぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)